あの日を忘れない。3.11経験栄養士 いまだからこそ非常食を見直しませんか!?

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質問
質問

「非常食」準備はしてあるけど…これでいいのかな?

管理栄養士<br>りんご
管理栄養士
りんご

3.11を機におおきな見直しを行った施設も多いと思います。

それから10年以上たっていますが、見直すところはありませんか?

管理栄養士<br>りんご
管理栄養士
りんご

病院・高齢者給食においてどのくらいの備蓄を用意するのか?どんなものを用意するのか?について3.11経験を交えてお話します。より臨場感をもって準備できるかと思います。

3.11 震災を経験した 栄養士より

2011年(平成23年)の東日本大震災からもう10年以上が経過しているんですね。

私は東北の者なので、3.11、この日は管理栄養士として、栄養科の厨房・病院の職員の一人として震災を経験しました。

あの日のことは皆さんの記憶の中に残っていると思いますが、

その日に現場にいた栄養士も次々と定年退職され、

入職してくる新人さんはその日栄養士として働いていない方が入ってきているのが現在の状況です。

そう感じたとき、あの日の経験は後世に語りつないでいかなくてはならないと思いました。

(当時は学生さんだった方も多くなっているんだなと、時の流れを最近感じました。)

防災備蓄のイラスト

あの日の経験と非常食の考え方について書いています。

けっこうしくじりポイントもあったので、それを教訓に献立を立て直しました。

非常食を準備するにあたり、見逃していた点なども書きました。参考になればうれしいです。

発生時の病院厨房の状況

地震のイラスト「揺れる街」

【14時46分頃に地震発生】

その時間帯は、栄養科の厨房はちょうど昼食やおやつの準備が終わり、休憩に入るような時間でした。

夕食調理前のゆったりした時間帯でした。

火を使ってない時間帯だったのは、不幸中の幸いな時間だったと感じています。

地震は強く長い揺れで、まずは身の振りかまわず逃げるのが優先でした。

震源地の近くでは、食事の心配よりも命の心配だった

さらに震源地の近くの病院は、厨房は鍋や食器が散乱し、ガスボンベが破裂した・・・と聞きました。

海の近い病院では、その後「津波が来る」となり、ただただ命を守るが優先されたという地獄のような状態を拝聴しました。

病院給食!さぁ、夕食をどうする!?

地震後、建物の外へ避難したあと、厨房へ戻りました。

今までに体験したこともない地震でしたので、まずは自宅・家族の心配がありました。

携帯電話は通じません。不安がつのります。「戻れる職員は戻ってもいい」との許可がありました。一通り安否確認したあと、厨房に居た職員で考えたのは

さて夕食をどうするか?でした。

栄養科の職員には「患者さまに食事を提供する」という使命がありました。

食事を出すにあたって検討したことは以下の点です。これを限られた時間で行いました。

  • ライフラインの確認
  • そのライフラインによりどんな食事を出すかの検討。

ライフラインの確認

食事を提供するにしても、以下のライフラインを点検する必要があります。

①水は出るか?

②電気は使えるか?

③ガスは安全に使用できるか?

電気・ガスの供給は熱源が確保できるか?に関わります。

この時すごく幸いなことに厨房機器メーカーさんが来ていたんです!!!

メーカーさんにより、ガスに問題ないことが確認されました。

他の熱源・水道・電気に問題はありませんでした。

食事の準備を開始しました。

第1食目 夕食のメニューを考える

1食目のメニューは、主食以外は非常食を提供することにしました。

  • ご飯・全粥・ミキサー粥
  • レトルトのカレーライス
  • 味噌汁缶
  • おろしりんご缶

 この時点では夕食の調理はまだでした。なので、夕の食材は使用せず、主食以外は非常食の提供をすることに決めました。

もともとの非常食の献立は決まっていましたが、その通りではなく出しやすいものを優先して提供することになりました。

見えた課題
  • 1日目の朝・昼・夕食~といった献立は、無意味だということが分かりました。
  • 災害はいつ起こるかわかりませんからね。
  • ☛後日、見直しにより『フェーズ』という考え方の献立に立て直しました。

主食は米飯・全粥・ミキサー粥

すでに夕食のご飯は洗米し、立体炊飯器に設置されていたので、米飯・全粥は立体炊飯器(ガス式)で炊飯することができました。

さらに、電気も通電していたので、ミキサー粥も作成できました。

見えた課題
  • 当時、ミキサー粥の非常食は常備してませんでした。
  • 電気が通っていたのでミキサーが回せましたが、通電してない場合の準備も必要だった。
  • ☛後日、ゼリー粥という商品を準備した。

レトルトカレー

カレーを常備されているところも多いかと思います。

この時、カレーを温めて1個1個開けていましたが、これが案外手間でした。

しかも、具アリだったので、この時は具をザルでししました。(ミキサーを使う時間がなかったので)

見えた課題
  • 個包装のメリット・デメリットを感じた
  • 嚥下困難者用の準備も必要であった。
大量調理におけるレトルトカレーのメリット・デメリット

メリット

  • 加熱する際に、(鍋・おたまなどの)調理器具を汚さずに済む。
  • カレーというメニューはごはん・パンなどと組み合わせて利用でき、調理が少なくてすむ。

デメリット

  • 1個ずつ開封するのが大変だった。しかも箱と袋。
  • カレーを使用した皿は洗浄が大変。ディスポ食器が良い。
  • (その後大袋のほうがいいと考え改善しました。)
  •  (使用しなかった場合、給食に再利用する際には開封が楽です。)
  • 加熱しなければならないタイプだったので熱源が必要であった。
  • 具があり、食形態によっては手間がかかった。

味噌汁缶

当時は、ホリカフーズの『レスキューフーズ』の味噌汁缶を常備していました。

レスキューフーズは、非常食用の食品なので長期保存が可能です。

 ※製造日より3年6ヵ月

注意だったのは、具が入っていることでした。(大根・麩入り)

ミキサー食等の(嚥下調整分類Ⅱ)の方へは提供できませんでした。

こちらも急遽、ザルで濾すという作業を行いました。

見えた課題
  • 嚥下困難者用の準備も必要であった。
  • 「缶を開ける」のは病棟か厨房かどうかの検討は必要。

おろしりんご缶

こちらは全食種で提供できました。

缶を開け、お皿に移し替えて提供しました。

ディスポ食器が足りない!

圧倒的に準備不足だったのは、ディスポ食器です。

「いや足りるだけ置いておけ!」とおもいますよねー。

缶詰とかはそのまま提供する予定だったり、そこまで考慮されてなかったり、そこも課題として残りました。

ディスポ食器は多めに準備しましょう。

腐る者じゃないし、コロナやノロウイルスなどの感染症時にも使用できるので、あって困りません。

見えた課題
  • 缶などの個包装の食品は、そのまま提供するのか、移し替えるのかの検討を行っておこう。
  • ディスポ食器は多めに準備しよう!
  • 箸やスプーンの準備も忘れずに。
  • プラスチックスプーンはかじって割れてしまい、誤嚥の危険性があるので注意。

配膳時のチェックポイント

エレベーターは使用できるのか?

エレベーターが止まっている!配膳は職員によるバケツリレー

2階・3階・4階に病室があったので、通常の配膳は配膳車に乗せて、エレベーターで配膳でした。

しかし、エレベーターが止まっていて点検中だったので、バケツリレーのように食事を運びました!

事務職・看護師・医療職・先生も集まってきてくれました!

職員総動員で一列に並んで、食事を運びました。

個人食札

なんと!まさかの救世主は食札でした。

トレーの上に食札を載せることにより、

  • 誰の食事か?
  • どんな食種か?
  • アレルギーはないか?

が分かり、震災時でも「安全に」提供できました。

エレベーターが止まった場合もシュミレーションしておくべきだと感じました。

洗浄時のチェックポイント

忘れていけないチェックポイント

  • 水が使えるのか?食器の洗浄ができるか?
  • 洗浄機は使えるのか?
  • 食器乾燥機が使えるか?

☛使用できない場合は、ディスポ食器を使用する。

備蓄庫のチェックポイント

備蓄庫・置き場所の忘れてはいけないチェックポイントです

  • 非常食はどこにあるか?が全職員が分かるか?
  • とりだしやすい場所か?
  • 鍵がかかった場所ではないか?
  • 震災時に崩れないようになっているか?

☛夜勤帯に災害が起こった場合、夜勤者が準備する可能性もあります。栄養科以外の職員への周知は必要です。また、何を準備するのか?がすぐにわかるように、備蓄庫に掲示しましょう。

トレーに乗せた写真を一緒に掲示しておくと分かりやすいですよ!

その他 非常食のチェックポイント

以下の食品もチェックしておくと良いです。

  • ✅水
  • ✅トロミ調整剤
  • ✅経管栄養剤
  • ✅職員食

1人あたり3Lの保存水が必要です。

3日分なら、×3日分必要です。

長期保存水というものもあります。

こちら10年保存水です👇

トロミ調整剤

トロミ剤は水分を摂るにも必要な方もいます。

ローリングストックで良いと思いますが、備蓄庫にも常備して定期的に交換するといいかも。

経管栄養剤・濃厚流動食

経管栄養の方へ提供している栄養剤は、ローリングストックでもいいかもしれません。

忘れてない?『職員食の為の食事』

どうしても忘れがちなのが、患者・入所者への対応を行う、職員の為の食事です。

看護師さんや夜間対応で事務の方が泊まったりもします。

コンビニ・スーパーでの食品不足もありました。

実際に、東京などでも帰宅困難者が発生しました。

ガソリン不足により車があっても通勤ができない場合もありました。

帰ることができない職員の食事も用意しておく必要があるでしょう。

病院機能を維持するために、その職員のための食事も必要となってくるでしょう。

 

こちらは、嚥下調整食である必要はないですが、後日消費しやすいものを選ぶといいかもしれません。

パンやカロリーメイトなどを用意しているところがあります。

調理場が使える場合としては、ごはんとカレーなどの用意しました。

👇いまや「乾パン」ではなく”「パンのカン」”です

個包装のメリット・デメリット

先ほどのレトルトカレーのメリット・デメリットでも書きましたが、

それを踏まえて献立作成するといいですね。

  • 一個づつ配る際には良い。
  • 高齢者は缶詰などは開けにくい。
  • ゴミが多くなる。
  • 再利用する際にも手間になる

献立のチェックポイント

管理栄養士 <br>りんご
管理栄養士 
りんご

以下、非常食の献立作成のチェックポイントです。

1人あたりの1日の必要エネルギー量は?

こちら食種別など詳しく書いてます。(実際に献立を立てたときのエネルギー量付きです)

 

さて、理想は約束食事箋に合わせるのが第一かと思います。

なぜなら約束食事箋は、対象者(患者・入所者)の年齢・構成を基にエネルギーを算出し、設定しているものだからです。ですので、施設ごとに多少異なります。

また、食事摂取基準に合わせて設定しても、1日あたり女性で1400~kcal、男性で1800~kcalは必要ではないでしょうか。

参考:日本人の食事摂取基準2020年度版

1食あたり500~600Kcalを目安にすると、1日3回食事提供した場合1,500kcal~1,800kcalが必要です。

こちらまとまっている資料でしたので参考にさせていただきました。

参考: 平成26年3月 神奈川県秦野保健福祉事務所 地域食生活対策推進協議会 資料

(とはいえ、理想と現実…予算などもあり、必要エネルギーに満たないところもあるかと思います。)

 

普段使用している補助食品を追加して使用するなどの考えでようやく達成できるような感覚です。

※1本200kcal

食形態

食形態は各施設にある食種の準備は必要です。

ソフト食・嚥下食などの嚥下食分類に応じた食形態の準備が必要です。

食数は平均的な食数を用意します。

ちなみに、米飯が用意できなくても【全粥】があれば、米飯の方へも提供することもできます。

パンの提供は慎重に行いましょう。高齢者が多いところでは、詰まる可能性が高いので、米飯や全粥のほうが無難だと思います。

何日分?備蓄量

3日分は用意するのが推奨されています。

そこまで持てば、救助や復旧が行われる目安とされています。

非常食献立とフェーズ

震災後、献立の考え方を変更しました。

以下の通りです。

1日目2日目3日目
日にち単位の献立

👇

フェーズ⓪フェーズ①フェーズ②
1食目2食目3食目4食目5食目6食目7食目8食目9食目
フェーズ単位の献立

フェーズ(phase)とは、「局面・段階」などを意味します。

フェーズ0は、すぐに提供できるものを準備する必要があります。

数字が上がるごとに、熱源が加わったりして多少手が加えられるようになってきた局面での食事提供になるので、食材も異なります。

引用:大規模災害時の 栄養・食生活支援活動ガイドライン ~その時、自治体職員は何をするか~ (mhlw.go.jp)

こちらの引用は地域向けですが、嚥下困難者や糖尿病・アレルギーなど「要配慮者」などにも記述があり参考になります。

1食目が朝なのか、夕食なのかはわかりません。

震災直後は『フェーズ0の1食目』一択!という構成です。

第一段階 ”フェーズ0” すぐに提供できる食事

フェーズ0では

  • 水が要らない
  • 温めなくて良い。
  • 食器を使用しなくても提供可能。
  • まずは命を守るために食べる。

という内容です。

第二段階 ”フェーズ1” 栄養を確保 バランスも少し意識

フェース1は0よりも段階が少し上がります。

  • 水がある。
  • お湯が沸かせる

だと、フリーズドライ食品も使用できます。

第三段階 ”フェーズ2” 栄養量・バランスがしっかりとれ、食事の楽しみも少し意識

時を重ねると、贅沢かもしれませんが「おいしいもの」が食べたいとなってきます。

少しの甘いもの・刺激としての少し変わったものが欲しくなってきます。

避難所生活のイラスト(困った顔)

慣れない避難生活…こころが弱ってきます。

せめて食事だけでも活力となれたらと思います。

震災を通して変わった非常食の考え方

震災を通して考え方が変わりました。

  • 非常食は提供する状況によって、レトルト品がいいのか、個包装がいいのか?の検討が必要。
  • フェーズについて考える必要がある。
  • 食形態についての見直しが必要。(乾パンが非常食の時代は終わった…)
  • 食事だけでなく、食事の周辺器具への用意も必要だった。

いまや「そんなのあたりまえなこと」となっているかもしれません。

震災後は、栄養士間でも非常食について多くの情報共有が行われました。

また、保健所監査でもこれを機に監査員から指摘されることも多くなりました。

 「当たり前」になっていれば周知されたということだと思います。

 

 それまでの非常食の考えは、恥ずかしながら「一応あります」といった感覚でした。

「まさか」非常食を使うなんて考えておらず、賞味期限に追われて消費している”やっかいなもの”ぐらいの感覚でもありました。

 実際に「時は来る」ということが分かった経験でした。

食費との兼ね合い

さてここまでは、「非常食の準備はいくら当たり前」

とお話でしたが、最後に…

とはいっても、予算が必要なのが栄養士の悩ませどころですよね。

食費として出すのか?

または、設備費のような栄養科以外の予算として出してもらうのか?も考える必要があります。

各施設で方針が異なります。

ここは事務方へと相談しましょう。

相談の時期だけでも

以下の時期に折をみるとスムーズな相談に入れるかもしれません。

栄養管理委員会の時期に一度事務所と相談してから、議題として出すなんていうのもよいかもしれません。

  • 避難訓練の時期
  • 防災の日(9月1日)
  • 保健所監査の時期
  • そして、震災3.11の時期
  • 栄養管理委員会
管理栄養士<br>りんご
管理栄養士
りんご

委託給食が入っているところは委託管理でしょうか。

施設側栄養士さんはどのようなものが準備されているか?

どこにあるかを確認しておきましょう。

まとめ 非常食マニュアルの作成ポイント

  1. 備蓄の必要量(食数・日数)
  2. エネルギーの設定
  3. 食種ごとの献立作成(常食・嚥下調整食分類ごと・疾患別はどうするか 等)
  4. 献立の掲示
  5. ライフライン不通条件ごとの想定を行う
  6. 非常食の保管場所(分かりやすい・取り出しやすい場所)
  7. 非常食の準備方法を栄養科以外の職員へも周知する

非常時なので融通をきかせるところと、

非常時だからといっても守らなくてはならないところ、とあるかと思います。

 

3.11から10年以上がたとうとしています。

あの日私たちは「絆」を感じました。

今コロナ禍の私たちですが、こういう形で繋がることができてうれしく思います。

 

私たち栄養士は

あの日の教訓を胸に、

安心安全な非常食の準備により

身を守る対策を考えておきたいなと、また思い返し、

ここに記します。


参考資料:

栄養士会『災害時の栄養・食生活支援マニュアル』平成23年4月

おいしい非常食があったら教えてください

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