異物混入が起きてしまいました!
給食の衛生管理において、起こってはいけない事象、その一つが『異物混入』。
「異物=本来、入るはずではないもの」が入ることは食の安全性に関わります。
患者さん、利用者さんへ信頼を失うとこにもなりかねません。
しっかり対策しておきましょう!
起きたことは2度と起きないように、対策をしておきましょう!
異物混入の例
では、どのようなものが異物になりえるのでしょうか?
異物混入の例は以下のようなものが挙げられます。
- 髪の毛
- 袋の切れ端
- ラップ・手袋の切れ端
- ネジ
- クリップ・鉛筆の芯・輪ゴム・ホチキスの芯 その他
思い当たるものはあります?
それでは具体的な対策を考えていきましょう。
ケース1 髪の毛混入への対策
髪の毛混入への対策としては、
- 厨房に入る者は帽子をかぶる。(栄養士・業者へも徹底する)
- 帽子の形状を考える。頭全体を覆うものなどへ変える。
- 粘着ローラーでコロコロをかける。
- 粘着ローラーを定時にかける。(厨房に入る前だけでなく、10時や11時と調理中にも決めてやっているところもあります)
- 髪の毛だけではく、腕毛等の混入の可能性も考える。
- 毎日洗髪をする・クシでとかす。(前もって抜け毛を減らしておく対策)
恥ずかしながら無くならない…毛の混入。
よくある給食の帽子ではツンツンしている女性の方の髪の毛が収まりきらず、帽子の下に↓のような使い捨てキャップを使用していました。
実習でお世話になったセントラルキッチンではこのような帽子を使用していました。その施設では開設以来異物混入を出したことがない。と言っていました!
実はこちらも検討しましていましたが、空調・温度の関係上(古くて温度管理が難しく…)、調理員に受け入れてもらえず、保留となってしまいました(^-^;
ケース2 袋の切れ端混入への対策
袋の切れ端が混入する場合もあります。
ビニール状の袋の切れ端の異物混入があった場合、調味料や冷凍食品の切れ端を疑います。
具体的対策としては、
- 切り離さない。
- 大きめに切る。
- 使い切る。(半端にしない)
です。
1の「切り離さない」は、切れ端部分が袋と一体化しているので、他に混入する可能性を抑えることができます。
ついつい三角にちょっとだけ切るとかやりがちですが、これは残す前提での切り方です。
本来、食材は残さず使い切るが原則でもあるので、すべて出してしまうという意識で、大きめに切りましょう。
2の大きい破片なら、混入した際に気づくこともできます。
また、袋のカットにはこのような商品もあります。
開封するものをはさみ、真横に軽く引くだけで切れます。
ケース3 ラップ・袋の切れ端への対策
調理に関するものは、混入する可能性があるという前提で対策します。
入った場合まで考えて、気づくようにする対策も欠かせません。
そのため、こんな商品もあります。
青い色のラップ
青い手袋
※食品衛生法適合商品です。
このように、透明でなく色のついた商品なら、気づきやすいというメリットがあります。
ケース4 ネジ混入への対策
ネジ⁉まさか!とは思いますが、ありえます。
スライサーのネジが緩んでいて、混入。そのまま最後まで残って煮物に入ってしまっていた。という、
可能性があることは認識しておいてください。
その前提で居れば、定期的にチェックする等の対策ができます。
- スライサーを使用前・使用後は、ネジが取れていないか確認する。
- さらに絞める際ネジの数を数えて、チェック表を作り、毎回チェックします。
起きてみないと何が起こるかはわからないということもありますが、
可能性を考えること、想像を働かせることは大切です。
「一度起きたことは二度は起こさない」という心構えが大切です。
ケース5 クリップ・鉛筆の芯・輪ゴム混入への対策
これらは、承知の通り、厨房内への持ち込み禁止の品々です。
- 鉛筆・シャープペンの芯・消しゴムのカス
- クリップ
- 輪ゴム
- ホチキスの芯
- 画鋲
- 小さめのマグネット
- 鉛筆・シャープペンの芯・消しゴムのカス については周知のとおりかと思います。
なので、厨房内の書類の記入は最低限にし、鉛筆ではなくボールペンで行います。
(医療監視(保健所の監査)の提出資料で、鉛筆での記入があるものは、どこで記入したか?が聞かれることもありますのでご注意ください。)
袋は輪ゴムで止めずに、大きめのクリップ等で対策します。
掲示物は最低限にし、落ちて混入する可能性のある画鋲や小さいマグネットは使用してはいけません。
もし、落ちても大きいものなら気づく可能性が上がりますよね。
ヒヤリハット対策は大きな医療事故対策
ヒヤリ・ハット=ヒヤっとした・ハッとした事象=インシデントと言われています。
インシデント(incident)はもともと英語で「事件」「出来事」という意味で用いられる語である。 英語でも「重大な事件に至る危険のあった小事件」というニュアンスでインシデント(incident)の語が用いられる。 インシデントの他にアクシデント (accident)なども事故・事件に関する語としてよく用いられる。
weblio辞書
インシデントは「ちょっとした事」と思うかもしれません。
しかし、それは氷山の一角であるとも言われています。
小さなことでも報告・解決していくことで、大きな事故(医療事故)を防ぐこともできます。
ですので、小さなことも報告・分析、解決案の立案・実行・さらには再評価が大切です。
PDCAサイクルを回しましょう!
PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)とは品質管理など業務管理における継続的な改善方法。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返して業務を継続的に改善する方法。主に日本で使われている[注 1]。AをActionとする場合もある。
『ウィキペディア(Wikipedia)』より
ヒヤリハット報告書の記入内容
小さなインシデントを集めるために『ヒヤリハット報告書』というものがあります。
以下は、私が経験した病院での報告書様式の内容です。以下を全て記入して提出となります。
以下を具体的に記述します。
- 発見時の状況:どのような状況だったか。
- 原因分析:なぜおこったのか?
- 対策:具体的にはどのような対策を行ったか。行うか。
以下は、チェックを行い、最終的に医療安全委員会が集計・統計化します。
- 発見時の日(平日か?休日か?)
- 発見・発生時の時間(〇時□分)
- 時間は?日勤帯か?夜勤か?
- 担当者の経験年数は?□1年~5年 □6年~10年 □11年~20年 □21年~30年・・・
- レベル分け(どの程度の事故であったのか)
【逆ヒヤリ】報告
さらに、逆ヒヤリという方式もとっていました。
これは、直接の原因側ではないほうが報告書を提出する方法です。
これにより、原因側がちゃんと報告書を出しているかのチェックにもなります。
事故を起きたままにしないという姿勢がここにも出ていました。
スタッフへの意識改革も要(かなめ)!
どんな対策を考えても全職員が同じ意識でなければ、その漏れた一人からでもインシデントは起こる可能性はあります。
特に起きやすい時期は、新人が入って来た時期・忙しい時期は特に注意です。
スタッフ一人一人が、なぜこの対策をやっているのか?を意識することで、実行性は高まり、医療事故の予防につながります。
栄養科においては、食品のみでなく異物による窒息事故は重大な医療事故となりえます。
小さなインシデントも医療安全委員会へヒヤリハット報告します。
(参考)↓医療安全委員会
まとめ
異物の混入は患者様を不快な思いにさせたり、信用問題に関わります。
物によっては、間違って口に入れてしまうと医療事故にもつながるおそれがあります。
二度と起こさないように、異物混入予防の方法をまとめました。
- 具体例を提示し、マニュアル化する。防げる異物は、厨房に持ち込まない。
- 『ヒヤリハット報告書』により、徹底的に原因解明。
- スタッフへの意識づけ・意識改革! 一度起きてしまったことは二度と起こさないようにする。
『安心・安全な食事』のために、今日も対策の実行をこころがけていきましょう。
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