妊娠糖尿病の栄養指導を行うことになりました。
「産科」がある病院だと栄養指導をする経験があるかと思います。
『妊娠糖尿病』
産科のある病院でならいずれ経験する病名だと思います。
どんな病名であろうと栄養指導するのが管理栄養士の役割ですが、
特に新人栄養士さんにとっては
糖尿病+妊娠時
という状況のイメージは湧きにくいと思います。
(私りんごも、出産すらしていない時期に『離乳食の指導』をしていましたが、産後ママさんのほうがよっぽど情報を得ているだろうと思い、顔を赤くしながらたどたどしく離乳食の指導をしていました。)
なので、私も恥ずかしながら自身が妊娠糖尿病になってはじめて患者さん側の心境を理解することが多かったです。そんなりんご自身の経過が、私含め新人栄養士さんの栄養指導のラポール形成に役立つのではないかと思ってお話ししたいと思います。
患者さんとの信頼関係を築いた栄養指導を行っていただければ幸いに思います。
妊娠糖尿病患者の気持ちが理解できラポール形成ができることにより、栄養指導を良好に継続できる。
管理栄養士が糖尿病?なんて言ったら当時はちょっと恥ずかしいなと思っていました。
でも今は産科の指導に携わることができ、その経験も糧となっていることを実感できています!
妊娠糖尿病のイメージと誤解
「妊娠糖尿病」と聞いて、どのように思われるでしょうか?
- 妊娠したら食欲がわくっていうし、食べ過ぎちゃったのかな?
- 妊娠して太ったのかな?
- もともと肥満だったのかな?
どうでしょうか?
これらの予測を立てるのは大切ですが、安直に「では、食べ過ぎないようにしましょう」となると誤解につながります。
りんごが『妊娠糖尿病』と最初に言われて感じたこと
りんごは妊娠してから血糖値が高く、『妊娠糖尿病』と診断されても、
なんで?
意味が分からない???
の連続でした。
その理由は、『糖尿病』(ここでは二型糖尿病)になりやすい人に当てはまらないと思っていたからでした。
糖尿病になりやすい人 (一般的なⅡ型糖尿病の場合)
私の場合は、
- 家族に遺伝性の糖尿病なし。
- BMI:非妊娠時BMI19.0㎏/㎡ 普通。
- 間食ほぼなし!!
- 甘い飲料は妊娠してから。つわりの時だけ。多量ではない。
なので、なんで??
と、疑問でした。
多くの妊婦さんもこのように感じるのではないのでしょうか?
妊娠糖尿病になりやすい人
ですが、入院後実際に栄養指導の際のパンフレットにはこう書かれていました。
妊娠糖尿病になりやすい人
- 家族に妊娠糖尿病患者がいる
- 太っている
- 大きな赤ちゃんを出産した経験がある
- 流産・早産・死産の経験がある
- 尿糖陽性の人
- 高齢出産(35以上)
そして、改めて当てはめてみると…
- 家族に遺伝性の糖尿病はなし。
- 非妊娠時BMI19.0㎏/㎡ → 高血糖発覚時体重(19週)非妊娠時+3.7kg 範囲内
- 一人目の体重は3118gでおおきめだが、巨大児ではない。
- 流産の経験あり(2回目の妊娠時に稽留流産)
- 尿糖陽性あり。(つわりもあり健診前に甘めの飲み物が飲みやすく、飲んでしまっていた)
- 妊娠時35歳。。。高齢出産
4・5・6が当てはまりました。😨
納得はできましたが、
しかし、その時点の管理栄養士の知識では予防しようのない域でした。
*今後、高齢出産も増加傾向ですし、妊娠糖尿病の頻度も増えるのでは🤔?とは、考えます。
『妊娠糖尿病』と『糖尿病』の違い
妊娠糖尿病はどうしてなる?
食べたものは消化吸収され、ブドウ糖になり血液中に入ります。
インスリンというホルモンがブドウ糖を細胞に取り込んでエネルギーにしたり、脂肪に変換します。
妊娠すると胎児が大きくなるにつれてエネルギーの消費量は増えますが、
胎盤から分泌されるホルモンの影響により血中ブドウ糖の分解が悪くなります。
また胎盤でインスリンを壊す酵素が作られるためインスリンが効きにくい状態が強まります。
血中のブドウ糖の値が高い状態が続くため、母体や胎児に様々な合併症が起こる可能性があります。
詳しくはコチラ↓『妊娠糖尿病とは?』
『命』をかかえていることへの責任
妊娠糖尿病が他の糖尿病と異なる点は、
赤ちゃんがいることです。
『命』を抱えていることです。
(糖尿病の方を否定するものではありません)
妊娠しているだけで、その責任を背負っています。
自分のすることが赤ちゃんにも影響するという気持ちが常にある状態です。
(だから少しのことでも防御反応として敏感に感じ取るのです。)
そこへ、
『糖尿病になってしまった自分』を責めてしまったり、
『赤ちゃんごめんね』と思い悩むかたもいらっしゃいます。
こういったメンタル面を考慮したいと考えます。
妊娠糖尿病とメンタル
私は、もしかしたら多くの妊娠糖尿病の方とは経過が違うかもしれません。
おそらく精神面も病みまくったほうかもしれません。
でもその経過を赤裸々にお伝えすることで、
産科を担当される管理栄養士さんが、
『もしかして、そうなる妊婦さんもいる』ことを知ってほしいと思いました。
なんで?の連続→自己肯定感の低下
自分が”管理栄養士”だったこともあるかもしれませんが、
第一段階では『なんで妊娠糖尿病になっていまったんだろう。。。』と、悩み、落ち込みました。
- 一人目はなんともなかったのに、なんで?
- つわりの時期に、飲みやすい清涼飲料水を飲んでしまったから?
- リンゴジュースや果物を食べ過ぎてしまったから?
などと、原因を考えたくなりました。
食べたいものを食べまくっていたわけでもなく、
悪阻で食べられるものの中で選んだだけなのに…。
『妊娠糖尿病になりやすい人 』についてはわかっていても
次第に落ち込みへと変わります。
その後、検査入院では、エネルギー量が計算されている食事を食べていても血糖値が安定することもないのかと、さらに落ち込みました。
検査入院中の環境の変化
特に入院中の環境が落ち込みに拍車をかけたと思います。
以下の原因がありました。
- 検査入院中の経過に落ち込んだ。(12日間の長期になった)
- 入院中は人にあまり会わないこと
- 気晴らしがあまりないこと
- 病院食として食べられるものが決まっていること。おいしいもの大好き!食へのこだわりが仇(あだ)となった。
食べられる食事は決まっているし、売店へ行っても食べ物の購入はNG。
レシピ系の雑誌が目に入るだけで食べたくなるので、「食べられないんだった…」と、ストレスがたまりました。
自分の自由度が下がることは、ストレスになるんですね。
『妊娠糖尿病』の食事の指導
妊婦さんへ
まずは、主治医・担当の管理栄養士さんの指示に従ってくださいね!
『血糖値が上がりにくい食事』って?
食べ方でお伝えしているのは、以下の方法です。
- 『野菜から食べる』
- 『ゆっくり食べる』
野菜から食べると、食物繊維が糖の吸収を穏やかにしてくれます。
『分割食』とは?その目的は?
基本は3食の食事ですが、検査入院などで1日の血糖の上がり下がりを見た際に、
3食のピークが高すぎる場合は、分割食にしましょうとなります。
分割食の目的は、
- 3食のエネルギー量を低くして血糖値のピークを抑えます。
- 3食のエネルギーを減らした代わりの必要栄養量確保の為、その食間に補食を行います。(時間帯は10時・15時・20時など)
補食の内容は病院によって異なりますが、
であることが多いです。
病院の衛生管理上、保管が可能なものが選ばれていることも多いようです。
しかし、ここで疑問が。
血糖値=糖質なのに、なんで間食が糖質多めやねん( `ー´)ノバシッ
突っ込みたくなるのわかりますか??
理由はあります。
糖質の減らしすぎは、『ケトン体』の上昇につながるからです。
妊娠中は『ケトン体』の検査も行います。
ケトン体が多いとどういう影響があるのか?
これは管理栄養士さんなら教わると思うので割愛します。
ケトン体は、ひどい悪阻の時にも上昇します。
ですので、妊娠期はこの『ケトン体』のモニタリングも行います。
インスリン導入の方への栄養指導の注意点
インスリンが導入された方へは、基本的には栄養指導内容は変わりがありませんが、
- 『低血糖』についての注意が強調する
- 糖質量は減らさないこと。(ごはんを減らすことは低血糖の恐れがあるためNG)
- インスリンと食事の時間は守ること。
- 特に、子供が居る方は、食事時間がまばらになりがちなので、そういうことはないかを聴取する必要あり。
生活状況
さいごに少し追記ですが、私が栄養指導を担当させていただいた方は、2人目以降の妊娠の方もいらっしゃって、子供のお世話をしながらご苦労されているかたもいらっしゃいました。
『上の子がまだ小さいのでゆっくり食事ができない』
『自分の食事の献立まで考えられない』
『バランスの良い食事というより食事するので精いっぱい』
また
『つわりは終わったけど、料理するのがきつい』
そんなお話も耳にしました。
そんな生活背景も考慮して、簡単に準備が可能なバランスのとれた食事のご提案も一緒に考えています。
まとめ
妊娠糖尿病の栄養指導を担当する際に、意識するところをまとめました。
- 妊娠糖尿病の発症機序には、糖尿病とは異なる”悪阻・流産・高齢”など産科特有の原因特徴があることを認識する。
- 妊娠糖尿病の経過は、妊娠時の”マタニティブルー”等の心理面も考慮する。
- 妊娠糖尿病では、一人目か二人目か、子の年齢により育児状況・生活状況が影響することも考慮する。
- 分割食献立作成の際には、単にエネルギーのみの調整をするだけでなく、糖質量・脂質量のバランスもよく考慮する。
- 食事の選択の際には、『食べやすく栄養のあるもの』の選択を忘れない。
お恥ずかしながら私情をさらしましたが、
栄養指導をする方・妊娠糖尿病の方、どちらにも寄り添いたいと考えています。
今後も、妊娠糖尿病の経過も発信していけたらと思っています。
以上、参考になればうれしいです。
ありがとうございました!
参考文献:参考文献:糖尿病診療ガイドライン2019/日本糖尿病学会
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