禁食対応が多いことは、より良いサービスでしょうか?
病院においては、わたしはそうとは考えていません。
禁食対応ばかりに気をとられ、ミス(ヒヤリハット・医療事故)が出ては本末転倒だからです。
なぜ、病院かというと、
・病院は短期的・治療中心という場である
・特養・老健などは、長期的・生活の場である
という違いがあるので、特養・老健ではサービスにあたる場合もあるかもしれません。
以上を根拠に、禁食において対応する食品を限定することを取り組んだ業務改善を行いました。
実際、私が直営給食時代に行った禁食における業務改善を記したいと思います。
参考になればうれしいです。
禁食って?嗜好かアレルギーか?
給食において出さない食品を、〇〇禁という表現をします。
肉がだめなら、肉禁。
牛乳がだめなら、牛乳禁。
また、アレルギーは絶対的に出さないようにしますので、〇〇アレルギーと区別して表記するところが多いでしょう。
優先順位としては、
- アレルギー
- 摂食嚥下機能上の不可
- 消化機能上の不可。(術後等で、消化に悪い食品)
- 嗜好(好き・嫌い)
でしょうか。1と2と3はどれも命に関わるといえば同順位かもしれません。
ここでの禁食は主に4の嗜好における禁食です。
禁食対応はサービス?
「嫌いな食品を出さないようにし、食べられる食品に代える。」という点で言えば、サービスに値するでしょう。
しかし、禁食をどこまで対応するか?です。
人によっては、数種類の禁食がある方もいらっしゃいます。
あれもこれもダメと言われれば、食事を準備するほうも大変です。さらに病院での大量調理においては、家のようにひとりひとり全てには対応できないのです。そのことを納得していただく必要があるでしょう。
そして、禁食に注ぐ労力を、おいしい食事に使っていただいたほうがいい!そのほうがよりより患者サービスではないでしょうか?
禁食対応食品削減のメリット
禁食をしぼるメリットはあります。
①禁食対応へかけていた時間を、おいしい料理を作ることにかける時間となる。
②禁食対応の複雑さを簡略化することで、ヒヤリハットミスを少なくすることができる。
回りまわって、患者さんへご迷惑をかけることも少なくなり、かつおいしい料理へかける時間が増え、それこそがサービスの向上へつながると思います。
禁食対応食品の絞り方。5ステップ
対応する食品の優先度を決めます。
①アレルギー食品は優先的に全て対応とします。
②摂食嚥下上不可、消化機能上不可のものも優先して対応します。
または、摂食嚥下食・胃潰瘍食等の食種に組み込み、その食種へ変更する方法をとります。
そうすることで、コメントを付けなくても出ないような仕組みにします。
③牛乳・乳製品禁の代替え食品の種類を見直し
牛乳がだめ・乳糖不耐症等で「下痢になる」という方もあり、多いです。
昼に牛乳が付くという病院・施設も多いので、あらかじめ別なものを用意している病院がほとんどでしょう。 代替品としては、ヤクルト・ヨーグルト・ジョア・プリン・ホットミルク(乳製品禁で、リンゴジュース・ゼリー・野菜ジュース等)あれば患者さんのご希望に添えることはできますが、選ぶものが多いとミスも起こりやすくなります。また、在庫管理も大変です。食材費も上がる可能性もあります。
ですので、代替品を少なくするという対策もあります。
④禁食(嗜好)としては、肉・魚・卵・大豆製品は対応するものとします。
これは、たんぱく質不足防止の観点からです。これらが食べられないことが栄養の不足に大きく関係するからです。
できれば、大皿のみ対応すると決めます。(中皿・小皿は対応しません)
⑤禁食対応する回数・人数が多いもののみ対応します。
例えば、人参・長ネギ・玉ねぎ・にんにく・ニラ・トマト・きのこ等統計的に多い食品のみ対応しますと決めておきます。それ以外のオーダーがあった場合は、理由をお聞きし、できる限り対応しない旨をご説明にあがります。
禁食対応へのご説明
①病院・病棟への説明
従来、当たり前のように行っていた禁食対応をやめるということは、抵抗があるかもしれません。
栄養科ばかりの利益になるのではなく、患者様・病院の利益にもなるということを説明しましょう。栄養管理委員会や医療安全委員会で説明していきましょう。
・ミスをなくす
・食材費削減
等を上げてみるのはいかかでしょうか。
②患者さんへの説明
食べられないものを聞くと、「出さないように対応してくれるのなら、お願いします」となるでしょう。それが当たり前にならないように説明します。
「アレルギーでしょうか?」
「(その食品は)よけたら食べられますか?」
「入っているとどうしても食べられないかんじですか?」
→ダメ押しで、
「 たくさんの食事(具体的に〇〇食といっても可)を作っているもので、
できればお願いしたいです 」
と、ご相談・ご説明により、納得していただきます。
『食べられないけど、自分で抜けば食べられる』食品は、お願いします。
ほとんど出ない食品は残してください。とお願いします。
このような段階で、大半は心よく受け入れてくださります。
病院は短期的・治療中心という場である
特養・老健など長期的・生活の場である
という違いがあるので、特養・老健ではこのようにいかない場合もあるかもしれません。
特にこの方法は普段から使えます。
栄養士の聞き取りの段階で、禁食を減らしましょう。
以上のように、禁食の対応食品を減らし、ヒヤリハットを減らしていきましょう!
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